スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Ecological Landscape Drawing / 小川総一郎の透明水彩画ブログ
1980年に Sir の称号を授与されたランドスケープ・アーキテクトであり建築家.
1981年から1983年まで,先生からランドスケープ・デザインとドローイングを習いました.
実は,当時デッサンがあまり好きではありませんでした.
日本で美大生だったころ,先生から「硬めの鉛筆の先を常に尖らせて描け」とか「線を重ねて面を作れ」と喧しく言われ続け,それまで好きだった絵を描くという行為が面白くなくなってしまったからでした.
Sir Peter先生の鉛筆デッサンは衝撃的でした.
先生は,6Bの芯を入れたカランダッシュのホルダーを握ると,いきなり紙にこすりつけました.力の入れ方で1本の鉛筆でグラデーションができました.さらに,ポケットから先を削ったワインのコルクを取り出し画用紙こすりつけると,簡単にぼかしができました.
僅か数分で樹林が浮かび上がりました.
マジックを見ているようでした.
Sir Peter先生のドローイング
「Soichiro,自分が見たものを好きなように描けばいいんだよ」
「だって,君と私は同じ風景を見ているけれど,見えているものが違うでしょ」
「見えているものが違うから,君と私の描く絵は違うものになるのさ」
「見えているものは描けるが,見えていないものは絶対に描けない」
「君が感じたものを描けば,君の絵を見た人に君が感じたものが伝わる」
「いいかい,ランドスケープ・アーキテクトになるんだったら,人に伝わる絵を描かくことだ」
「絵は君が作りたい情報が詰まった設計図だ.君が描いた絵がそのとおりの風景になる.というより,絵のとおりの風景にならなきゃプロとはいえないね」
ランドスケープ・アーキテクトとして絵を描くことの意味がわかったような気がしました.
透明水彩を使ったドローイングもこのとき初めて体験しました.
Sir Peter先生は,透明水彩の実演をしてくれました.
透明水彩は,ウィンザー&ニュートン ハーフパン8色で小さな筆付き,色はランドスケープでよく使うものに置き換えてありました.画用紙はファブリアーノ粗目125×180だったと思います.水差しは蜂蜜か何かの蓋付きガラス瓶の空き瓶でした.
最低限最小の水彩セットです.
「これなら上着のポケットにすべて入るし,思い立った時いつでもすぐ描けるだろ」と先生はおっしゃいました.
画用紙を上下逆さまにして下半分に水を引いて青を置き,画用紙を少し下に傾けると青が下の方に移動しました.画用紙を回転させ元に戻すと,空のグラデーションができあがっていました.ティッシュペイパーでところどころ青を吸い取ると簡単に雲になりました.
今度は下半分に水を引きサップグリーンを置き.ところどころチャコールグレイをその上に置くと画用紙の上でふたつの色が混じりました.その混じった色を箒で履くように筆で寄せ集めると,うねる大地の牧草になりました.空と牧草が乾くのを待ってから,藍に近い緑で空と牧草の間で筆を上下に走らせ,また,チャコールグレイを重ねると樹林になりました.最後に茶色の点をいくつか落としら牛になりました.典型的なイングランドの田園風景が僅か20分程度で完成しました.
寮に帰って先生のまねをしてみましたが,何回描いても塗り絵になってしまいました.
透明水彩は奥が深いと思いました.
tag : 透明水彩